ベトナムの高齢化が医療費を増大させる

ベトナムや他のASEAN諸国は今後10年、医療費の問題と向き合う必要があります。

2018 年 07 月 , by

過去10年間で平均寿命が延び、所得が増加したことに伴い、ベトナムを含むほとんどの東南アジア諸国の高齢者人口が急増し、人口構造に急速な変化が生じたとともに、医療に対する需要が高まりました。YCP Solidianceのレポートによると、ベトナムは高齢者人口の成長率がCAGR4.43%と最も高く、2015年から2040年の間に、ASEAN諸国において医療需要を喚起する中心的な存在となるとみられています。

YCP Solidianceのホワイトペーパー「ASEANが抱える約3200億米ドルの医療費問題」によると、今日ASEAN主要6カ国のほぼ全てにおいて、年少人口(0-14歳)の成長率はマイナスまたはゼロに近い数値を示しています。シンガポールを除く全ての国において、生産年齢人口(15-64歳)は、依然として緩やかな成長をみせていますが、老齢人口(65歳以上)は急激に成長しており、生産年齢人口と比較すると、その成長率は3~10倍にも達します。

したがって、ASEAN地域の人口構成は今後大きな推移を示すとみられています。東南アジアでは、2016年には全人口の9.6%が60歳以上でしたが、高齢者の平均寿命の延伸と富裕層における出生率の低下により、2050年までに2倍以上の21.1%に達すると予想されています。比較的多数を占める高齢者人口は、医療ニーズが高まるにつれて、社会にさらなる負担をかけると予想される一方で、比較的少ない労働者人口は、増え続ける医薬、治療、介護の需要に応えるために、経済的富を生み出さなければなりません。

レポートにおいては、ベトナムや他のASEAN諸国が、今後10年間に医療費の問題と向き合う必要があることが強調されています。約4200億米ドルの医療費は、2025年までに7400億米ドルにまで増加し続けると推定されています。ASEANの政府および医療業界のステークホルダーは、将来の危機を回避し、将来的により効率的な医療モデルを開発するためにも、この3200億米ドルの増加に対処する必要があります。

2013年から2017年の間に、ベトナムの1人当たりの医療費の伸びは26.78%に達し、2013年の112米ドルから2017年には142米ドルに拡大し、1人当たりGDPの成長率を上回りました。ベトナムの公的医療支出は2014年にはGDPの3,8%を占め、これはASEAN諸国の中で最も高い数値でした。

医療費の問題とは別に、レポートではさらに、老朽化し混雑した病院、限られた国家予算、時代遅れの医療機器、能力を備えた医療スタッフの不足など、ベトナムの医療業界が直面している多くの課題についても言及しています。

ベトナムの医療制度の改善

ベトナムや他のASEAN主要6カ国は、課題が顕在化しつつあるなかで、早期に対応を取る可能性があります。 まず第一に、新たな医療費の資金源の創出が必要です。これには、タバコ、アルコール、塩、砂糖などの不健康な高級品に対する課税が考えられます。消費者や政府に向けてこの状況を改善するために、各国は合理化された共同支払い制度や、より広範な保険制度が必要といえます。ベトナム市民の約4分の3は医療保険に加入しています。

第二に、公立病院は国家予算に大きく依存していますが、需要に対して、予算は依然として低すぎる状況にあると考えられています。ベトナムやASEAN主要6カ国は、予算を合理化し、経費を削減する必要があります。

第三に、ベトナムとASEAN主要6カ国は、将来的なコスト増を回避するために、治療の初期段階における予防に対して積極的に投資すべきであるといえます。各国は、早期診断と治療を通じて、患者の生存率と大規模な治療の必要性の改善を達成することも可能といえます。この戦略は、持続可能な医療政策の重要な柱となるはずです。

ベトナムおよびASEANの医療分野が抱える課題については、ホワイトペーパーをご覧ください。

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