「国6」排出基準に備える中国の

自動車業界

中国政府は、排出に関するコンプライアンスを果たすことはビジネスそのものであるという立場を取っており、各メーカーは現在、「国6」の幅広い措置に備える必要があります。

2019 年 08 月 , 特集:

2019年8月-世界最大の自動車市場で事業を展開する各メーカーは、中国の「国6」排出ガス基準への準備を整えています。欧州連合の基準に基づいて作成されたこの基準は、2段階で適用されます。 「国6a」は2020年1月から導入され、走行距離1kmあたり1gから0.7gへと30%の一酸化炭素の削減が求められます。「国6b」の導入は2023年1月に予定されており、1kmあたり0.5gと一酸化炭素の基準がさらに下げられるとともに、窒素酸化物と粒子状物質(PM)に対するより厳しい規制も適用されます。さらに、第6段階の基準においては、これまで国内で採用されていなかった基準である、亜酸化窒素の制限、粒子数、車両が放出する固体粒子数(1km単位で測定)が導入されます。

アジア市場に特化した戦略コンサルティング会社SolidianceのシニアパートナーであるNicolas Pechetは、来たるべき制度においては中国の排出問題に取り組むためのより幅広いアプローチが示唆されているものの、市民の暮らしに利益をもたらすような変化が生じるまでには、明らかに時間がかかると述べています。 「排出削減が全面的に行われることになるのは明らかです。しかし、第一段階としてはまず、CO2削減のみが対象となります。他の排出物については、2023年以降に対処される見通しです。窒素酸化物とPMは、乗用車から排出される主要な大気汚染物質ですが、それぞれの削減目標は40%と33%とされています」(Pechet)。

中国の大気汚染は、国民に健康上の危機をもたらしています。危険なほど高いレベルの発がんリスクを持つPM2.5が充満し、スモッグに覆われた中国の巨大都市の画像は、世界中に広まりました。都市中心部の状況が改善されていることは事実です。北京は2018年には汚染観測日数が減少しており、2013年には58日記録されていたのに対して、15日という結果でした。PM2.5の平均濃度は、1立方メートルあたり51mgに低下しており、これは12.1%の改善でした。

しかし、中央政府はより多くの成果を求めています。生態環境部の2018年6月の報告書によると、石炭燃焼に加えて、車両の排出物が大気汚染の重要な原因となっていることが確認されました。中国の自動車保有台数の合計は、2017年に3億1000万台にまで増加しました。「公害戦争」の一環として、習近平国家主席は以前、「人々に青空を返したい」という願いを表明しました。

それでは、自動車メーカーは貢献できるのでしょうか?Pechetは、一部の企業はすでに着手していると述べています。 「中国の外資系JVと中国企業の両方の自動車メーカーの複数のモデルは、すでに「国6」基準に対応しています。たとえば、吉利は6つの準拠モデルを備え、長安汽車と上海汽車はそれぞれ5つと4つのモデルを用意しています」とPechetは説明しました。自動車メーカーは、製造業者が基準を順守しなかった場合に、政府が躊躇なく介入する事態をすでに目の当たりにしています。2018年1月には、基準を満たしていなかったとして、複数の小規模自動車メーカーの500を超えるモデルの生産が停止されました。この措置は、国内メーカーと、外国の自動車メーカーの市場参入時に形成された合弁会社の両方に影響を及ぼしました。

しかし、DuckerFrontierのMarkus Pfefferer氏が指摘しているように、政府のデータからは、市場において554モデルのみが、「国6」基準を満たしていることが示唆されています。これは「国5」準拠モデルの約12%に相当します。 「これらの大半はJVメーカーや輸入車のモデルです」と、同社のアジア太平洋地域のマネージングディレクターであるPfefferer氏は言います。 「国内の独立系ブランドのモデルは20種類しか該当しません。自動車会社にとっては、短期間で基準に適応させ、短納期で製品を生産し続けることは困難な作業です。そのため、販売業者では供給不足が生じています」。

燃料噴射装置、エンジン燃焼の最適化、最新の吸排気構造など、内燃エンジン(ICE)を浄化する技術の導入が不可欠となります。 「エンジン以外にも、電子制御ユニットの改善、カーボンタンクの容量増強、燃料システムの商品性の改善、およびオンボード診断システムのアップグレードが挙げられます」。しかし、当然自動車メーカーは、世界最大の電気自動車(EV)市場における電動化の機会にも注目しています。

新エネルギー車


製造業者は、電力自動車全体の幅広い選択肢からモデルを採用するだろう、とPechetは言います。 「現在、プラグインは、新エネルギー車(NEV)の販売量全体の約25%を占めており、今後数年間でシェアを増やすと予想されています。一方、48Vマイルドハイブリッドは、車両のCO2排出量を13%削減し、21%を実現すると予想されます。そのため、「国5」準拠車両にマイルドハイブリッドシステムを適合させるだけでは、「国6」の適合には不十分です」とPechetは指摘しました。バッテリー式EVおよびプラグインハイブリッド生産台数全体の国家目標は2020年までに200万台とされており、主要企業は自信を表明しています。中国では例えば、VWは2021年までに中国市場において完全電動自動車を導入することで、EV市場への浸透を強化させることを発表しています。

しかし、EVの補助金を削減すると政府が最近決定したことで、自動車メーカーにとっては挑戦のハードルが高くなっています。以前に出されていた5万元(7457米ドル)の補助金は半分に削減され、2万5000元となります。さらに、受給資格を得るには、走行距離が250kmを超える必要があります。政府は以前、2020年までに補助金を廃止する意向を示していました。

中国の石炭への依存は依然として問題であり、石炭によって発電される電力は2018年に6%増加し4.9兆kw / hでしたが、現時点では、規制当局は、充電のために使用される電力に課税することでEVの展開を妨げる動きは取らない見通しです。 「現時点では、発電とEVを充電するための電力消費が関連付けられる兆候はみられません。」とPechet氏は言います。 「中国は、2030年までに石炭への依存を50%に減らし、既存のニーズを再生可能エネルギーに置き換えることにより、エネルギーミックスを改善すべく取り組んでいます。しかし、これは車両排出規制とは関係なく進められています」。

MITテクノロジーレビューは、中国がパリ協定に基づくコミットメントを果たす可能性が高いと考えています。同国は2017年に27%を占める温室効果ガスの最大排出国でしたが、炭素排出量は2030年までにピークに達する可能性があり、その時点までに、電力源の20%をクリーンエネルギーで供給したいと望んでいます。

大型車向けの規制

新たに導入される「国6」基準は、ヨーロッパと同様に、大型車両にも適用されます。古いディーゼルトラックは有害な車両排出の主犯であると考えられており、政府は2020年末までに、少なくとも90%の遵守率を目標にしていると発表しました。国内の一部地域は、今年の夏頃から「国6a」基準への適用を開始するよう指示され、基準を満たさないモデルは市場への参入が禁止されます。北京の周辺地域では、100万台以上の老朽化したディーゼル燃料トラックが、道路から消える可能性があると考えられています。「国6b」の完全導入は、2023年7月までに予定されています。

国際クリーン交通委員会(ICCT)が強調したように、この市場において中国が行っていることは、世界レベルで重要といえます。トラックメーカーに対して、「国6」はディーゼル微粒子除去フィルターのより徹底した使用を要求します。これは、新たに製造されるトラックの3分の2が、2021年までにすすが出ない構造となることを意味しています。中国が何も行動に出なければ、この比率は50%にとどまるものと考えられます。

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