インドネシア・オーストラリア

両政府間の協定から見出される可能性

インドネシア・オーストラリア包括的経済連携協定(IA-CEPA)は、両国間の輸出商品に大幅な関税引き下げを行い、様々な投資特権を提供します。

2019 年 03 月 , 特集:

(以下の通り掲載されています)

インドネシア・オーストラリア包括的経済連携協定(IA-CEPA)は、両国間の輸出商品に対する関税を大幅に引き下げ、様々な投資面での特権を提供するものです。この協定はまた、現在のASEAN・オーストラリア・ニュージーランドFTAと比べると、より市場志向型の輸入規制を提供するものであるため、二国間の経済関係は新たなレベルへと引き上げられる見通しです。

二国間貿易や投資面での関係強化が期待されています。インドネシア政府は、昨年13億米ドルに達した貿易赤字を削減し、国内総生産(GDP)の持続的な成長および維持に向けて、近隣諸国からの投資確保を試みています。

国内に目を向けると、この協定は、特に繊維、消費財、機械分野において、地元企業により大きな機会を与えるとみられています。また、医療およびテクノロジー業界における投資の恩恵も期待できます。

IA-CEPAの基本原則は、近隣諸国間で相互に利益をもたらす枠組みを構築することです。この連携は、両国が経済大国になるための第一歩であり、世界的な需要を満たすために、世界のバリューチェーンに貢献することを目的としています。インドネシアは、原材料を調達する能力と質の高い労働力を備えていることから、製造大国になると考えられています。最近のレポートにおいて、7000品目以上のインドネシア製品が、関税なしでオーストラリアに輸出されることが明らかとなったため、オーストラリアへの輸出総額は、増加し続けると予測されています。

2017年、オーストラリアはインドネシアから2億6300万米ドルの繊維製品を輸入しました。新たな協定により、現在繊維品にかけられている輸出関税が0%に引き下げられるため、インドネシアの衣料品企業は将来的に、より広範な取引の機会を得ることが可能となります。インドネシアはオーストラリアへの繊維製品の輸出国としては第4位につけており、ベトナム(2億7100万米ドル)、インド(4億8800万米ドル)、バングラデシュ(6億4000万米ドル)をわずかに下回っていますが、まだ成長の余地があるといえます。

オーストラリアとの自由貿易協定は、各メーカーが輸出先の多様化を模索しているインドネシアの日用消費財(FMCG)業界においても重要な役割を果たすとみられています。2017年、オーストラリアはインドネシアから14億米ドルの消費財を輸入しました。今回の貿易協定は、インドネシア企業が生産量を拡大し、輸入消費財に対して市場シェアを維持するのに役立つものであると考えられます。

オーストラリアのGDPの約10%はインフラ産業から生み出されており、政府は現在および将来の公共インフラ投資に350億米ドル以上費やすことを宣言しています。

弊社のデータによると、2018年のオーストラリアの輸入上位品目の1つとして、主にブルドーザーや掘削機などの機械類が含まれていました。しかし、インドネシアは市場全体の11.9%しかシェアを獲得できていません。そのため、インドネシア企業にとっては、販路拡大が見込める魅力的なターゲット市場になるとみられます。

IA-CEPAの重要なポイントの1つは、オーストラリア企業がインドネシアでより強いプレゼンスを獲得できる特権です。現在国内システムやインフラの面で信頼性が低い医療部門で将来的な投資が見込まれています。オーストラリアの医療分野への投資により、医療機器とリソースの両方における医療インフラの不足に対処し、国外への医療観光により失われた収益を補うことが期待されています。毎年50万人以上のインドネシア人が海外を訪れ、医療サービスの提供を受けています。

テクノロジー分野では、インターネット、スマートフォン、ソーシャルメディアの浸透が深まったことにより、インドネシアはスタートアップ・エコシステムの劇的な成長を実現しています。現在までに、オーストラリアの直接投資を通じてさらなる成長が見込めるスタートアップユニコーン4社の立ち上げに成功しています。過去5年間で、インドネシアのスタートアップ投資は68倍に増加し、2016年には14億米ドルに達し、2017年の最初の8カ月間で30億米ドルに跳ね上がりました。こうした状況から、今回の協定は、オーストラリアの投資家が、東南アジア最大の経済にアクセスするための、より広範な機会を提供するものと期待できます。

多くの機会が存在する一方で、インドネシアの企業経営者がIA-CEPA導入の結果、想定される事態として注目していることがあります。考慮すべき最も明白な要素は、インドネシア市場への新規企業の参入です。

この協定では、オーストラリアの企業経営者が国内でプレゼンスを獲得することを強く後押しするものであり、外国製品やサービスの流入で国内市場が飽和し、国内市場で地元企業のシェアが低下する事態となる可能性があります。

また、法的な不確実性や政治的な紛争は、オーストラリアからの投資に不利な結果をもたらす可能性があります。インドネシアは、政治的な変化が激しく、法制度も複雑であるために、貿易や投資の対象としてリスクが高い国であると考えられています。大統領選挙は4月17日に予定されていますが、経済ナショナリズムと経済的自由主義の間で論争も生じています。政府と議会の最優先事項は、新しい協定が制定され、翌年施行された後、インドネシア企業や業界関係者の権利を保証することです。

オーストラリアには著しい成長の機会を見出すことが可能ですが、参入するのが決して簡単な市場ではありません。来年に貿易協定が発効するに伴い、市場参入時に考慮すべきヒントがいくつか挙げられます。

まず、オーストラリア市場への参入を目指すインドネシア企業は、市場に関する知識とターゲット業界におけるネットワークを有し、必要な支援を提供してくれる現地の代理店との協力関係を構築する必要があります。現地市場に関するインサイトを通して、オペレーションや製品のニーズを理解することが可能となるため、この戦略は市場の不確実性への対策に役立つといえます。

もしくは、興味を抱いている企業は、事業の立ち上げプロセスをスピードアップさせるために、オーストラリアの現地企業との合弁会社を設立することも望ましい手段といえます。この手法を通じて、インドネシアの企業は、貿易協定が持つ性質による多くのビジネス面でのリスクを負うことなく、オーストラリア市場でのプレゼンスを拡大させることが可能となります。

出典:The Jakarta Post


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