自動車メーカーの戦略を左右する

上海のナンバープレート規制

中国の新車の37%はティア1都市で販売されており、ナンバープレートの割り当て規制が、自動車メーカーの戦略を左右しています。

2019 年 08 月 , 特集:

2019年8月-中国の多くの主要都市と同様に、上海では居住者の車両所有は厳しく制限されています。同市は毎年発行されるナンバープレートの数を制限しており、車両購入時にはナンバープレートが必要となります。ナンバープレートの発行を抽選方式で行っている北京と異なり、上海では希望者がナンバープレートに対して入札する、オークション型のシステムが導入されています。深刻な渋滞と危険なレベルにある市内の大気汚染が、このシステム導入の主な要因です。

その形状から青色のナンバープレートとして知られるこのアイテムの取得を試みる個人は、上海市民であるか居住許可証を所有しており、3年間連続して市内で税金を納めている必要があります。さらに、複数枚の所有は許可されておらず、犯罪歴に関して、少なくとも1年間は交通法を違反していないことが必須条件となります。

オークション方式により必然的に、車両の所有権は非常に高価格なものとなりました。 2018年には、ナンバープレートの平均価格は約8万8000元(1万2800米ドル)に達しましたが、これは平均的な国産車の価格よりも高額です。 アジアに特化したコンサルティング会社YCP SolidianceのシニアパートナーであるNicolas Pechetは、この信じられない価格をもってしても、230万人のオークションシステムへの応募はとどまることを知らない、と述べています。取得に成功したのは13万2586人のみで、成功率はわずか5.5%でした。上海では一般的に公共交通機関が好まれており、都市のほぼ全域が地下鉄と低床バスによりアクセス可能で、その両方の移動手段が毎年成長を遂げています。それでは、なぜ上海の人々の間で自家用車の所有が依然として求められているのでしょうか。

一向に満たされることがない

「上海の人々はナンバープレートを手に入れるために、主に2つの理由から、進んでお金を支払います」とPechetは述べています。 「第一に、ラッシュアワー時には、市内で登録されたナンバープレートは高速道路を利用することが可能ですが、それ以外の地域で登録されたナンバープレートは、高速道路を利用できません。第二に、上海のナンバープレートは、中国人にとっては、社会的地位の高さを示すものなのです」。欲求がその背景にあることは明らかです。ここで疑問なのは、オークションが果たして機能しているかどうかという点です。中国国家統計局は、2018年には上海に約302万台の自家用車が存在していたと報告しています。Pechetによると、2013年から2018年までの期間の自家用車市場の年平均成長率(CAGR)は全体で13%で、中国の全乗用車市場の同期間の成長率よりも1.3%低い数値ですが、決して市場が衰退しているわけではありません。

 「上海において自家用車の利用人口は依然として増え続けており、ピーク時にはまだ市内の一部で渋滞がみられます。」とPechetは述べていますが、北京ほど深刻ではありません。上海当局の公式データによると、高速道路の混雑指数は2018年に6%上昇しましたが、一般道路の混雑指数に変化はみられていません。

 しかし、大気汚染の軽減に関しては、一定程度の改善がみられたとPechetは感じています。 「このスキームは、道路上の車両からの排出量削減には非常に効果的でした。新しく追加された車両の大半は、エネルギー効率が高く、ほとんど、あるいは全く汚染物質を排出しません」。同氏は続けて言います。 「二酸化硫黄、窒素酸化物、粒子状物質などの汚染物質の濃度レベルは約10%減少しました。一酸化炭素の濃度レベルには変化がありません」。

 今後はどういったことが期待できるのでしょうか?Pechetは、短期的にはナンバープレートの総数は2019年には13万5000以下で安定すると予想しています。 「今後数年間で、政府はより厳しい申請条件とより高価格帯を課すことで、新しいナンバープレートの割り当てをさらに規制する可能性があると想定されます」とPechetは述べています。

上海のシステムに対して、批判がないわけではありません。オークション方式は、取得価格が非常に高価となることを意味しており、そのため、一部の人々は、運転がエリート層の特権となっていると合理的に結論付けています。Pechetは、そのような結果は意図的なものではないと主張しています。 「オークションシステムはランダムでコンピューター化されており、特定のグループに利益をもたらすことが意図されているわけではありません。また、超富裕層が他人のために複数のナンバープレートを購入することは困難です。ナンバープレートは、両親、子または配偶者からのみ、そして全所有者が少なくとも3年間ナンバープレートを所有した後にのみ引き継ぐことが可能であるためです」。

 グリーンプレート

グリーンナンバープレートの導入により、一部のドライバーにも道が開かれました。これらは無料で取得可能ですが、電化の要件を満たす車両に限定されます。申請者は、居住地または勤務地の近くの充電ポイントにアクセス可能であることも証明する必要があります。要件を満たす自動車は、中国の新エネルギー車(NEV)カテゴリーに該当する必要があります。これは、完全電動車あるいはプラグインハイブリッド車を意味し、選択肢も豊富です。

 NEVの利用者が増加すると、今後グリーンプレートの発行が規制される可能性があります。 「この状況は、限られた数の人々だけが先着順でグリーンナンバープレートを取得している北京と似ています」とPechetは述べています。 「住民は自分の順番を何年も待つこともあります」。もはやこうした状況とは異なっています。しかし、中国政府は、都市によるNEVのプレートの割り当てを許可しない意向を発表しています。既存の割り当て量は全てキャンセルされる見通しです。

 自動車メーカーの適応

これらのプレートをめぐる動向は、上海を含む中国の主要都市における自動車メーカーのビジネスにどのような影響を与えるのでしょうか?北京、広州、深センをはじめとする、全てのティア1の都市はこのシステムを導入しており、これらの都市における消費者が、新車の販売台数の大半を占めています。中国自動車工業協会(CAAM)によると、中国で販売されている乗用車の総数のうち、約37%がティア1の都市で販売されています。一方、2018年には、中国の新車販売は2.8%減少し、これは20年ぶりの減少となりました。そのため、Pechetは、ナンバープレートの制限が、「中国の自動車メーカーの成長とビジネスに絶対的な影響を与えている」と断言しています。

 「結果として、自動車メーカーは様々な都市における新たなビジネス戦略を立案しています」とPechetは続けて語りました。 「ほとんどの自動車メーカーは、主に低価格帯から中価格帯の従来型の車両に焦点を当て、ティア2、3、および4の都市において、販売ネットワークを拡大しています。Tier1の都市では、自動車メーカーはNEVモデルの開発に注力しており、従来型の自動車に関しては、中価格帯から高価格帯に絞るとみられます。ナンバープレートに高い金額を支払う消費者は、プレミアムモデルを好む傾向があります」。製造およびマーケティング戦略がは、今後導入される新たな規制に従って導入され、構築されることは間違いありません。

出展: Automotive World

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