タイの経済見通しを好転させる民政移行

専門家が、選挙後のタイの見通しについて意見を述べています。

2019 年 06 月 , 特集:

タイの選挙は常に関心の的ですが、直近の選挙も例外ではありません。それでも、プラユット・チャンオチャ氏の首相としての地位が確認され、安定性が継続される結果となったことは、同国の経済見通しを楽観視する一般的な見方や国外投資家を引き付ける魅力を裏付けていると、5月10日に開催されたSBF Markets Insight Seminarのスピーカーは述べています。

東南アジア第2位のこの経済大国は、2014年の軍事クーデター以来初となる選挙を今年3月に実施し、クーデターの指導者プラユット氏は、民政に移行する6月5日に議会で首相に選出されました。

安定した文政への平和的な移行は、タイの5150億米ドルの経済を維持するための経済政策と投資プロジェクトの継続を約束するものです。

タイの経済は、クーデターが発生した年の1%の低水準から、2017年に4%、2018年には4.1%成長しました。今年は世界的なリスクが高まっていますが、中央銀行はGDPは3.8%成長すると予想しています。

経済政策の継続性と安定性を支えるのは、2017年に導入された国家戦略法であり、同法は今後の政府の政策が、社会・経済的な開発に関する20年間の国家戦略と確実に一致するためのメカニズムを備えています。

ユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)のリサーチ部門長兼エグゼクティブ・ディレクターのSuan Teck Kin氏は、セミナーでこの点を強調し、投資家が混乱しないことが不可欠であり、政治が政策に影響を与えるべきではないと述べました。

同じイベントにおいて、コンサルティング会社YCP SolidianceタイオフィスのパートナーであるMickael Feigeは、ほとんどのビジネスリーダーが、政府がメガプロジェクトを進め、国内および国外から資金の流入を生み出すためにも、20年間の国家戦略が継続的に遵守されることを期待していることを明らかにしました。

前述のビジネスリーダーとしては、欧州銀行のタイ責任者、タイの法律事務所のマネージングパートナー、タイのシンガポール銀行のリサーチ部門のシニアバイスプレジデント、タイで確固たるプレゼンスを築いている韓国の大手化粧品会社のゼネラルマネージャーが含まれます。

タイのビジネスに関して、民間部門は首相と政府が承認されたことで経済が確実に改善されると考えている一方で、公共部門は運用計画が既に示されているメガプロジェクト、つまり東部経済回廊(EEC)が継続するものと信じています。

東部経済回廊におけるFDIを促進するインセンティブ

メガプロジェクトにより、消費、物流の流れが刺激され、観光客が増加し、より強力な経済成長を生み出すことに貢献するだろう、とFeigeは述べています。

タイ経済への投資拡大を目指すプラユット政権の政策の中心であり、野心的な450億米ドル規模のEEC開発計画は、航空宇宙や航空機技術、ロボット生産、電気自動車、デジタルテクノロジーなどのハイテク産業の成長を促進し、投資を獲得することを目的としています。

1万3000平方キロメートル以上に広がり、ラヨーン、チョンブリ、チャチューンサオの東部県を網羅するこのプロジェクトは、従来から続く農業への依存を減らし、タイ経済を東南アジアの成長の原動力に変革することを目指す政府の「タイランド4.0」計画の一部です。

1999年外国人事業法および特定の法律により、タイでは特定の種類の事業に関して外国人が規制されていますが、二国間または多国間条約により、いくつかの緩和策が取られています。また、ラジャ・タン法律事務所のタイオフィスのパートナーであるDussadee Rattanopas氏は、投資委員会を通じて、優先事業への外国直接投資(FDI)が促進されていると述べています。

EECの投資家は、税優遇や免税特権などの追加のインセンティブを享受できます。免税事業に関して、外国人は外国人事業法で制限された事業であっても、株式の100%を所有することが認められ、事業運営のためにタイで土地を所有する権利も与えられると同氏は付け加えました。

タイでのビジネスがより簡単に

シンガポールの投資家は、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム、中国、インドなどへの玄関口とみなされるこの国における、ビジネスのしやすさにも魅了されています。

UOBのSuan氏は、タイの20%の法人税率は、インドネシア25%、マレーシア20~24%、フィリピン30%などの近隣諸国に比べて有利であると指摘しました。また、法人税の免除や、個人所得税、土地のリースに関する有利な条件も提供されています。

その有効性を示す事実として、タイで投資申請が出されたプロジェクトは2018年に合計9020億バーツ(28億8000万米ドル)に達し、前年の申請額よりも43%高く、目標の7200億バーツを上回る結果を示しています。

「東洋のデトロイト」と称されるタイ東部のトヨタ、ホンダ、フォードなどの主要な外国の自動車メーカーの本拠地には、石油化学メーカーや電機メーカーも存在しています。

貿易、投資、および地域の輸送の動脈となることを期待されるEECにおいては、5件の主要なインフラプロジェクトが行われ、投資が促進されるとみられています。プロジェクトには、3カ所の空港を結ぶ高速鉄道、ウタパオ航空都市、メンテナンス、修理、オーバーホール(MRO)センター、レムチャバン港第3期開発、マプタプット港第3期開発が含まれます。

出典:BizQ

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