アジア小売市場における拡張現実(AR)活用事例

拡張現実(AR)は、小売産業を企業・消費者の両面から変革し、デジタル時代のショッピングにふさわしい没入感を実現しています。

2023 年 02 月 , by Noah Imson

Market Research Futureの業界レポートによると、拡張現実(AR)の世界市場規模は2030年までに4,600億米ドルに達し、2020年から2030年にかけて年平均成長率(CAGR)41.50%で加速的に成長する見込みです。

AR市場は急成長を遂げており、幅広い用途に活用できるツールとして、小売業をはじめとするさまざまな業界で世界的に普及しています。そのため、2023年以降、企業はAR技術を活用することで大きなメリットを期待できると考えられます。

AR技術の活用事例
ヘッドセットで仮想体験を提供する仮想現実(VR)に対し、ARはスマートフォンなどの身近なデバイスを使用して現実世界とCGを融合させたインタラクティブな体験を提供します。ARはブランドのニーズに合わせて柔軟に活用できるため、小売業の成長加速に繋がるとされています。

たとえば、AR技術は、スマートフォンやタブレット端末などのAR対応機器を使い、消費者が商品を自身の生活空間に置いた場合のイメージをリアルタイムで体験することを可能にします。この活用方法は、特にインテリアなどの分野で役立てられています。

一方、化粧品など他の分野でも、ARアプリによってブランドが成功し、消費者の購買体験も大幅に向上していることを示すデータが報告されています。ケロッグ経営大学院によるマーケティング研究では、通販アプリにおいてAR技術が大きな効果を生み出すことが明らかになりました。口紅の販売にAR機能を活用した例では、商品をオンラインで試せるようになったことで、購入率が20%近く向上し、売上全体を効果的に押し上げました。

さらに、ARは、ファッションや高級品などの分野でも活用されています。 2023年2月、フランスの有名ブランドであるカルティエは、人気のソーシャルメディアプラットフォーム「Snapchat」でARサービスを開始しました。カルティエは、SnapchatのAR機能「Lenses」を使って、代表的製品の一つである「タンク ウォッチ」に関するバーチャルキャンペーンを実施しました。このAR体験では、タンクシリーズの各モデルに関連する時代をタイムトラベルし、2023年に辿り着くと最新のタンクをバーチャル試着することができます。

アジアでは、シンガポールに拠点を置くベビーケアブランドALOBABYが、AR技術を使ったゲーム性のあるインスタグラムフィルターを国際女性デーに公開しました。このフィルターは、ブランドの認知度を高めるだけでなく、ユーザーの合計得点に応じて割引コードが付与されるなど、マーケティング戦略の側面も持っていました。また、BMWのような自動車メーカーも、消費者がバーチャルショールームで自動車をカスタマイズできるサービスにARを活用しています。

ARの出現は、購買体験を向上させるだけでなく、今後テクノロジーがビジネス上の意思決定に影響を与える可能性も示唆しています。現在、小売業界はもちろん、他の業界においても、スマートテクノロジーツールがマーケティングや事業戦略にもたらすメリットが急速に認識されつつあります。今後、ARやVR、AIといったツールの普及に伴い、技術主導のビジネスアプローチが加速していくことが予想されます。

デジタル時代を迎え、業界を問わず従来のツール以上にオンラインショッピング利用者を惹きつけることができるARがビジネスを急成長させています。今後、ARが購買体験を向上させ、消費者と企業の両面から小売業界のビジネス環境を再構築することが期待されます。

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