中国におけるIOV(自動車のインターネット化)の可能性

IOV技術の開発は中国の自動車業界に旋風を巻き起こすことが予想され、ビジネス機会としても大きな期待が寄せられています。

2021 年 05 月 , by Alexandra Santiago

近年、中国の自動車市場は全体的に波がある状況です。中国自動車工業協会(CAAM)によると、2018年の総販売台数は前年比2.7%減の2,802万台となりました。減少傾向は2019年も続き、自動車購入税の引き上げや排ガス規制の大規模な変更などが原因で、総販売台数は8.2%減少しました。しかし、この傾向は今後数年間で変化すると予測されており、2023年には自動車の保有台数が4億台を超える見込みです。

 

その背景には、新エネルギー車(NEV)産業の発展があります。中国のNEV産業は、電気自動車を推進する政府の施策と、最先端の自動車技術を生み出すグローバル企業の支援を受けています。よりスマートで革新的な自動車へのニーズが国内・世界市場の両方で高まる中、自動車のインターネット化(IOV)は、自動車革命の主要な担い手となることが期待されています。

 

スマートで先進的なテクノロジー

自動車のインターネット化(IOV)とは、自動車の内部通信を対象としたウェブシステムを指し、自動車同士、自動車と人、また自動車とインフラやインターネットとの間で無線通信を行うことができます。IOVは、交通管理、リアルタイム情報サービス、スマートコントロールに役立ち、より効率的で環境にやさしい交通エコシステムを実現します。

 

ロシア、西ヨーロッパ、北米などの市場で世界的に需要が高まる中、中国のIOVユーザーは2017年に1,780万人に達しました。IOVは、RFIDGPS、無線測位技術、ビッグデータやクラウドコンピューティングとの統合といった技術に大きく依存しています。すでに自動車メーカーでは、IOV全体のバリューチェーンの一環として、HuaweiZTEなどの世界的な大手企業、China Unicomなどのサービスプロバイダー、OnStarなどのテレマティクス・サービスプロバイダーからの投資が行われています。

 

新技術を迅速かつ継続的に導入することで、IOVのバリューチェーンは、様々な関連領域を幅広く柔軟にカバーしています。

·       上流:RFID、センサーメーカー、ポジショニングチップ、その他ソフトウェアなど

·       中流:端末機器、ソフトウェア開発会社、自動車メーカーなど

·       下流:システムインテグレーター、TSP、インターネットコンテンツプロバイダー、モバイルネットワークオペレーターなど

 

広範な政府の支援

自動車の未来を左右するIOVの成功は、政府がこの急成長する市場を強力にサポートしていることにも起因しています。具体的には、IOVによるスマートな交通手段を構築するために、下記のような新しいプログラムや取り組みが実施されています。

·       工業情報化部は、市場に多数の新規プレーヤーがいるため、IOVのための国家標準システムの開発に関するガイドラインを発行し、業界全体の標準を設定しました。

·       国家発展改革委員会は、2025年までに5G-V2Xによる「スマート」自動車の開発ニーズへの対応を進めます。

·       国務院は、新世代のインテリジェント・コネクテッド・ビークル(ICV)を創出するために、「中国製造2025」政策を通じてIOVの開発を推進しています。

 

モビリティの未来

中国のIOV産業は、人工知能、IT、クラウドコンピューティング、その他の技術的応用の分野で未開拓な領域が多く、新規プレーヤーにとって非常に魅力的な市場となっています。市場は今後10年でさらに発展・安定することが見込まれ、貴社のビジネスがこの自動車革命において重要な役割を果たせる可能性を秘めています。今後の見通しや既存のテクノロジーの概要については、こちらからレポートをダウンロードしてご覧ください。

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