フィリピン:ロックダウン下でも活況を呈するビジネス領域

検疫による規制が続く中、現地企業はフィンテックやデリバリーサービスの領域において成長を加速させています。

2021 年 06 月 , by Alexandra Santiago

ロックダウンの規制も刻々と変化し、2020年の年間GDP9.6%縮小する中、フィリピンもまた厳しいビジネス環境下に置かれている状況です。首都圏とその周辺の州(総称:NCRプラス)では、GCQ(一般的なコミュニティー隔離措置)の規制が徐々に緩和されつつあり、99%が中小企業のカテゴリーに属するフィリピンの企業にとっては、経済を再建させなければならないというプレッシャーがますます高まっています。

 

20205月にYCP Solidianceが発表したレポート「新型コロナウイルスの流行下でも成長を続けるフィリピンの主要分野」では、フィリピンを景気低迷から脱却させうる主要な成長産業を紹介しました。その約1年後となる20216月の時点では、これらの産業のうち、金融サービスと運輸サービスの2つ分野は、安定した成長を続けているだけでなく、地元企業の事業継続を支援し、最終的には国の財政的な立て直しにも貢献している状況です。



フィンテックユーザーの増加

フィリピンの金融サービス業界において、フィンテック分野が盛り上がりを見せており、フィリピンの新聞「Philippine Daily Inquirer」は、2020年にデジタル決済を利用するフィリピン人の数が5,000%増加すると報じています。

 

6月初旬には、フィリピンの大手モバイル決済アプリであるGCashは、会員数が4,000万人を突破し、フィリピン人の約3人に1人がGCashアカウントを持っていると報告しています。20203月に同国で初めてロックダウンが行われて以降、デジタル決済への需要が高まりをみせ、同国の中間層の大半が新型コロナウイルスの感染防止のためにキャッシュレス決済に移行しています。GCashPayMayaDragonPayGrabPayなどは、LazadaShopeeなどのEコマース企業からだけでなく、オンライン運営に軸を移しつつある従来の実店舗型のレストランや小売店からも支持を集めています。

 

デジタル決済の台頭により、Bangko Sentral ng PilipinasBSP)のBenjamin Diokno長官は、2025年までに、現金依存の環境からキャッシュレス中心の環境への移行を予測しています。Business World誌によると、2020年にインストールされたフィンテックアプリのうち69%がデジタルバンキングプラットフォームであり、インドやシンガポールの企業がこの新興市場に参入する中、BSPはデジタルバンキングに関する新しいガイドラインを発表しました。

 


デリバリーサービスとコングロマリットの協定

20203月に政府がECQ(強化されたコミュニティー隔離措置)を発表した際、デリバリーサービスは、商品やサービスを動かすために「必要不可欠」とされていました。消費者も企業も、注文した食品や電子商取引で購入した商品、さらには政府の書類や医療品を運ぶために、俗に「ライダー」と呼ばれるこれらのサービスを頼りにしていました。

 

1年経った今でも、フィリピンの人々のデリバリーサービスへの依存度は下がっておらず、成長を続けています。実際に、宅配便業者は車両数を拡大しており、事業の強化やサービスの拡大のために、コングロマリット企業や市場関係者と有益なパートナーシップを結んでいます。

·       Grab Philippinesは、Food Safety and Hygiene Academy of the PhilippinesFoodSHAP)と契約を結び、食品の取り扱い基準の向上を目指しています。自社のフードデリバリープラットフォーム「GrabFood」は、最も人気のあるサービスの一つです。

·       バイクの配車アプリ「Angkas」は、デリバリーサービスを提供しており、フィリピン赤十字社の公式パートナーとして、救急用品、献血、医療品などの安全な輸送をサポートしています。

·       オンライン配達サービスの「Toktok」は、地元のコングロマリットであるRobinsons Mallsと提携し、食料品の買い物や配達サービスを提供しています。

 

この2つの分野の着実な成長は、地域経済の見通しを良くするだけでなく、フィリピン人が自宅で安全に商品やサービスを利用できるようにすることで、フィリピンで暮らす人々の生活の質を高めることにも繋がります。また、パンデミックの影響を受けた中小企業も、日常業務を再開させるとともに、こうした成長領域への事業進出も視野に入れつつあり、閉塞感のあるフィリピン経済の全体的な活性化が期待されています。

 

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